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2007年11月に作成された記事

2007/11/30

ハワイの大望遠鏡「すばる」の軌跡。構想から完成まで29年の人生を賭けた仕事。

101 お正月、クリスマスに値する周期のブログとなりひたすら謝罪させていただきます。さて、いま小平桂一先生がお書きになられた「宇宙の果てまで」を読んでいる。東京大学理学部物理学科卒で日本はもとより世界の天文学に大きな貢献をされている先生である。何を隠そう私は星空が好きだ。もっと言えば八ヶ岳山麓から見る星空が本当に好きである。八ヶ岳といえば野辺山宇宙電波観測所がある。私はキャンプに向かう途中、野辺山で始めてこの巨大な電波望遠鏡の存在を知ったのだが、天空に向かうその姿や周囲の風景と美しく調和する姿には感動したことを覚えている。そして、先生が書かれた「宇宙の果てまで」を今読んで、野辺山宇宙電波観測所への想いがさらに深いものとなった。

この本には小平先生が若きしころからハワイ島マウナケア山頂に大望遠鏡をつくろうと試行錯誤、悪戦苦闘、人生をかけて挑んだ27年間の人生そのものが書かれているのだが、1989年に元内閣総理大臣の海部俊樹氏が非公式に野辺山宇宙電波観測所を視察された日のことが書かれている。その日、小平先生は総理と同席され、遂に「計画を推進してはどうですか」とのひと言を総理から頂くことができたとある。まさしくそれがこの野辺山宇宙電波観測所なのである。この本をお読みになられた方は、20年程の長きに渡り活動をされてきた小平先生が、その日どれほど感激されたかを想像するのは容易であろう。現場では言葉では表現できない感動があったと思われるが、1970年後半から始まった構想は遂に約20年の月日を経て光が射したわけである。そして「すばる」は1999年に完成に至った。1990年からも既に7年が経過している。

本に書かれている内容そのものに感動することは勿論であるが、私は小平先生が若きし頃から諦めることなく27年もの歳月一つの目標に向かって自分の「生きる」という行為そのものを投下し続けた「魂」に共鳴し、驚きを隠せない。もし、これがビジネスマンの仕事であれば、きっと数年でさじを投げていると思われる内容で、ある種先生の言動は学者の方々には勿論、ビジネスマンである私に忘れていた何かを感じさせるものであった。仕事柄、国内外のエグゼクティブビジネスマンに数多くお会いするが、果たして「すばる」の構想から完成までのストーリーに匹敵する「魂の目的」を持ち続けて仕事に挑んでいる方がいるかどうかは定かではない。

ビジネスマンに対して一生に1つ達成できるような目標で頑張れという気は毛頭ないが、人としてこのような目標の持ち方ができるように生きることができたらどんなに素晴らしいだろうと思う。そこには多くの知識と努力、証明する行動力など多くのことが要求されるが、私も遅れながら今まで思い続けた目標を掲げ「ミニすばる物語」をつくれたらと考えている。

この本を読む前の2004年冬、マウナケア山頂「すばる」を私はハワイ島まで見に行ったが、その時の感動を思い出させていただいた。今度は、「すばる」プロジェクトに参加された小平先生はじめ多くの方々の思いを胸に再訪してみようと思う。

Top18

上部写真は4000mを超える頂に建つ「すばる天文台」。下部写真は頂から雲の下に落ちる夕陽を見る。シルエットはフランスの天文台。世界中の天文台が集まる星の聖地。

自身で撮影

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